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腎臓を守る食事 あなたも摂りすぎかも? リンとの付き合い方
腎臓病と診断されたら、リン制限って必要?? そもそもリンって何? 知らず知らずのうちに摂りすぎになっている、ということもあります。腎臓病と診断されていないあなたにも・・ここではリンについてをお伝えしていきます。
腎臓病は・・・
その名の通り、腎臓のはたらきが悪くなる病気です。
一度失われた腎臓の機能は、多くの場合は回復することがなく、慢性の腎不全となります(急性の腎臓機能障害といった例外もあります)
食事や薬物療法が必要になりますが、特に食事療法は腎臓病の発症予防と重症化予防において重要と言われています。
参照:慢性腎臓病 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
リンの役割
リンは体内のミネラルの中でカルシウムに次いで多い栄養素で、成人の体重の約1%を占めています。
その85%は骨や歯にリン酸カルシウム・リン酸マグネシウムとして存在しています。残りの15%は、たんぱく質や脂質と結合し、体内の細胞に存在するほか、エネルギーを発生させる化合物の構成成分ともなっています。
また細胞のpHバランスや浸透圧を保つ働きをするなど、体内でのいろいろな働きに関わっており、体には必要な栄養素です。
幅広い食品に含まれるので、健康的な食事を続けている方で不足する恐れはほとんどないと考えられています。
そのため、健康な方でも不足や欠乏を気にするのではなく、過剰摂取に注意が必要な栄養素になります。
リンの食事摂取基準 (健康な方の目安)※食事摂取基準2020年版より
成人男性:目安量 1000mg/日 耐用上限量 3000mg/日
成人女性:目安量 800mg/日 耐用上限量 3000mg/日
※耐容上限量は健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限を与える量と定義されています。.この耐容上限量を超えて摂取すると,過剰摂取によって生じる潜在的な健康障害のリスクが高まると考えれています。
※食品添加物の無機リンは加算されていないため、実際の摂取量はこの値よりもはるかに多いと考えられています。
参照: リン(厚生労働省)
参照:リン | e-ヘルスネット(厚生労働省)
リンを摂りすぎるとどうなるの??
リンを摂りすぎるとカルシウムの吸収が悪くなり、血中のカルシウム濃度が低下してしまいます。その影響により副甲状腺機能が亢進し、ホルモンの作用によって骨のカルシウムが溶け出す現象が起こります。骨のカルシウムが少なくなると、骨折しやすくなったり、骨の中がスカスカになる病気「骨粗しょう症」を引き起こしたりします。
また、リンは鉄の吸収も阻害します。貧血の人や成長期の子供の摂りすぎには注意が必要です。
腎臓ではリンの排泄と再吸収を行い、体内のリンの量を一定に保っています。健康な人なら摂りすぎたリンを尿中に排出できるのですが、腎臓の機能が低下すると、血液中にリンが溜まってしまいます。血液中のリンの濃度が高まると、血管でカルシウムと結合して石灰化を起こし、血管が硬くなってしまいます。
リンには2種類ある?!
ひとことでリンといっても「有機リン」と「無機リン」の2種類があります。
★ほぼすべての食品に含まれる「有機リン」
有機リンは肉や魚、豆、穀類などのタンパク質と結合していて、ほとんどの食品に含まれています。リンを控えたいからといってこれらの食品を制限すると、体に必要なタンパク質が足りなくなってしまいます。タンパク質は筋肉や髪、肌など、さまざまな部位を作る材料になる成分なので、不足すると筋力の低下や肌荒れなど、悪影響を及ぼします。健康な人であればそこまで気にする必要はありません。
★カップめんやファーストフードに多い「無機リン」
「無機リン」は食品添加物として、インスタント食品や加工食品・ファーストフード・コンビニ弁当・菓子等に含まれます。食材の風味や食感、保存性を良くするために使用されています。原材料名に「リン酸塩」「乳化剤」「かんすい」「膨張剤」「酸味料」「pH 調整剤」などと書かれていれば、無機リンが使われていると思っていいでしょう。
有機リンの吸収率は20~60%なのに比べて、無機リンの吸収率はほぼ100%。確実に体内に吸収されるのです。そのため、過剰摂取に知らず知らずのうちになりかねません。吸収率が良すぎることと、リンは食品表示義務がないのでどれくらいの量を摂取しているか分かりません。食品添加物入りの加工食品はなるべく避けるほうが良いでしょう。
こうやってリンと付き合おう
リンの摂り過ぎが血管を石灰化=血管を固くし脳卒中や動脈硬化や高血圧、腎臓病などを促進する恐れがあることが報告されています。リンとの付き合い方をご紹介します。
★リンの多い食材を控える
リンは、肉や魚、卵、乳製品などのたんぱく質の多い食品に含まれています。そのため、たんぱく質を控えることでリンも必然と控えることができます。
しかし、なるべくリンを摂らないようにと食事自体の量を減らしてしまうとエネルギー不足になり、たんぱく質不足や必要な栄養素の不足にもつながります。
同じ食品の中でもリンが多いものと少ないものがあるので、食材の選び方でリンの摂取量を減らすことができます。
【肉類】
牛肉、豚肉、鶏肉の中でも、レバーはリンが多く含まれている部位です。
【魚】
骨や内臓ごと食べる小魚にはリンが多く含まれています。食べる量を控えるようにしましょう。煮干しを使った粉末状の出汁パックも、リンが多く溶け出します。かつお節や昆布の方がリンが少ないです。
【乳製品】
乳製品もリンが多く含まれる食材です。特にプロセスチーズは無機リン(添加物)が含まれています。チーズはプロセスチーズではなくナチュラルチーズを選びましょう。牛乳ではなく豆乳に替えると、リンの含有量を半分近く減らすことができます。
【卵】
リンは卵黄に多く含まれています。卵白はリンが少なく良質なたんぱく質を摂ることができます。
【米】
米にもリンが含まれています。特に外周に多く含まれているため、精米度を上げると、リンの含有量を下げることができます。玄米ではなく白米がおススメです。
【そば】
そばもリンが多く含まれています。そばではなくうどんにすることをおススメします。そば類のなかでは「更科そば」がリンの含有量が少ないです。
★無機リン含有量の多い食品を避ける
吸収率のたかい「無機リン」は食品添加物として、インスタント食品や加工食品・ファーストフード・コンビニ弁当・菓子等に含まれます。これらを摂取する頻度が多くなるほどリンの摂取量が増えてしまいます。たんぱく質を制限するより、吸収率が良すぎる余計な無機リンを制限する食事が良いと言えます。
★調理法のでリンを減らす工夫をする
①食品添加物はお湯に通すことで短時間で溶け出します。ウインナーは、焼くのではなく切り込みを入れてゆでるとリンを減らせます。ハムやベーコンなど加工食品は一度茹でてから使いましょう。
②インスタント麺はスープと麺を別で作り、麺のゆで汁は捨てるようにしましょう。
★リン含有量を調節した特殊食品を利用する
リンの含有量を調整した牛乳や調味料などの食品が販売されています。上手に活用するのも良いでしょう。
『無機リン』は食品を美味しく大量生産し、安全に流通させるため工場で使われる添加物です。なので入っているものはコンビニ弁当や加工食品、ソーセージやハム、魚肉ソーセージやハンバーグ、麺、プロセスチーズなどにも含まれています。無機リンが多く使われている食品を把握し、毎日毎食ではなく、食べる頻度を減らすことが重要です。若いうちから控えることをおススメします。
末期腎不全は全世界的に増え続けています。早期発見、早期治療することが大切です。生活習慣病(肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常)や動脈硬化を指摘されたら早めに生活習慣、食習慣を見直しましょう。
慢性腎臓病の食事療法の基本は、「塩分を控える」「たんぱく質制限」「適正エネルギー量の摂取」の3つと言われています。また、必要に応じて「カリウムやリンの制限」が加わります。
もとの疾患の種類、病状、腎機能によって異なります。間違った食事制限は、病状の悪化に繋がるため、主治医や管理栄養士に相談しながら行いましょう。
参照: | 我が国における慢性腎臓病(CKD)対策への取り組み(厚生労働省)
参考文献:一般社団法人 日本腎臓学会編 エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023、東京医学社(2023)
参考記事:あなたの腎臓は大丈夫!?自覚症状がない「隠れ腎臓病」について
参考記事:もし、腎臓病と言われたら?何からどうすればよいの?
参考記事:腎臓を守る食事 塩分って必要?不要? 塩分を控えるコツ7選
参考記事:腎臓に負担をかけない食事 適正エネルギー量とは?
参考記事:腎臓を守る食事 カリウム制限ってどうすれば良いの??
生活習慣病を改善したい方、気になっている方
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管理栄養士 腎臓病療養指導士
大都 宏子(だいと ひろこ)
私はここに来るまでの20年。多くの在宅で生活習慣病の療養をされている方に出会ってきました。病院とは異なり、自宅で食事療法に取り組まれる方の悩みや不安は千差万別。自分なりに取り組むもなかなか改善できない。何からすれば良いのかわからない、気づけば重症化していた・・・悩みは出会った人の数だけあったように思います。 ここでは、少しでもみなさんの不安や悩み解決の糸口になるような情報を発信していきたいと思います。