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腎臓を守る食事 たんぱく質の制限について  


腎臓病と診断されたら、たんぱく質はとって良いの?悪いの??どうすれば良いの?ここでは、そんな疑問について腎臓に負担をかけないためのたんぱく質との付き合い方についてお伝えしていきます。

腎臓病は・・・

その名の通り、腎臓のはたらきが悪くなる病気です。

一度失われた腎臓の機能は、多くの場合は回復することがなく、慢性の腎不全となります(急性の腎臓機能障害といった例外もあります)
食事や薬物療法が必要になりますが、特に食事療法は腎臓病の発症予防と重症化予防において重要と言われています。


参照:慢性腎臓病 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

 




そもそもたんぱく質って??

たんぱく質は、身体の重要な構成成分の一つで身体を作る材料として必要な栄養素です。食事から摂取したたんぱく質がアミノ酸に分解されて身体に吸収されると、筋肉や臓器、肌、髪、爪などの材料として使われるほか、ホルモン、代謝酵素、免疫物質などになり、さまざまな働きをしています。また、エネルギー源としても使われます

身体を構成する20種類のアミノ酸のうち、9種類は必須アミノ酸(不可欠アミノ酸)と呼ばれ、カラダの中で合成することができません。この必須アミノ酸を補うためには、食事からタンパク質を摂取しなければなりません。

たんぱく質を多く含む主な食品には、肉、魚介類、卵、大豆・大豆製品、乳・乳製品があります。これらの食品は、必須アミノ酸をバランス良く含んでいることから「良質なたんぱく質」と呼ばれています。また、穀物、豆類、野菜などにもタンパク質は含まれていますが、良質のたんぱく質の食品と比べると、含まれるたんぱく質は少なめです。

たんぱく質の推奨量は、日本人の食事摂取基準(2020年版)に示されており、性別や年齢によって異なります。また、体格や活動量などによって調整も必要です。
日本人の食事摂取基準(2020年版)に示されているタンパク質推奨量は、18~64歳の男性で65g、女性で50gです。



参照:たんぱく質 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

 





たんぱく質と腎臓の関係

3大栄養素のうち炭水化物と脂質は、体内で燃焼すると最終的に水と二酸化炭素に分解されます。二酸化炭素は呼吸によって体の外に排出され、水は体に残っても害になることはありません。
しかし、たんぱく質は体内で燃焼すると、窒素化合物(尿素窒素や尿酸など)という最終産物(老廃物)として残ります。。窒素化合物は呼吸によって排出されることはなく、腎臓から排出されるしかありません。
そのため、腎機能が下がっていると、たんぱく質の摂取量が増えれば増えるほど、血液中の老廃物をろ過する腎臓に負担がかかることになるのです。


腎臓病の食事療法の基本は、「塩分を控える」「たんぱく質制限」「適正エネルギー量の摂取」の3つと言われています。また、必要に応じて「カリウムやリンの制限」が加わります。

食事療法は、もとの疾患の種類、病状、腎機能によって異なります。間違った食事制限は、病状の悪化に繋がるため、主治医や管理栄養士に相談しながら行う必要があります。



 

参考記事:もし、腎臓病と言われたら?何からどうすればよいの? 

 

 


たんぱく質を制限する

たんぱく質制限はいつから??

たんぱく質制限食は、主に中等度から重度の 慢性腎臓病 患者さんに対する食事療法として推奨されています。
しかし、尿たんぱくの多い人や腎機能低下速度が速い人については、必要に応じてたんぱく質制限が行われます。栄養欠乏を来さないよう注意を払いながら、0.6~0.8 g/kg 標準体重/日のたんぱく質制限の指導が推奨されています。
たんぱく質量は
GFR45~59:0.8 ~1.0g/kg 標準体重/日
GFR<45:0.6 ~0.8g/kg 標準体重/日
で計算します。

例えば、GFR50 標準体重60kgの場合、0.8~1×60=48~60gが1日の摂取たんぱく質量となります。

参考文献:一般社団法人 日本腎臓学会編 エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023、東京医学社(2023) 




たんぱく質を控える調理の工夫 たんぱく質を控えてボリュームアップ!

★厚切り肉⇒薄切り肉+野菜でボリュームアップ
ステーキ肉やとんかつ用の厚みのあるお肉だと食べられる大きさが小さくなってしまいます。見た目も寂しく悲しくなってしまいますよね。
薄切り肉と野菜を一緒に炒めたり、薄切り肉に野菜などを巻いた肉巻きがおススメです。小さいお肉でも串カツにし野菜(玉ねぎや椎茸、ピーマンなど)の野菜フライと一緒に盛り付けると見た目もお腹も満足できます。

★魚は塩焼きより南蛮漬けがおススメ
たんぱく質をほとんど含まない春雨や片栗粉をはたいて揚げる、もしくは揚げ焼きにし、野菜と一緒に南蛮漬けにするとエネルギー補給と同時に、食事自体のボリュームを上げることもできます。また、水溶き片栗粉で「野菜あんかけ」もおススメです。

フライにの衣は・・・
通常、フライの衣は、小麦粉→卵→パン粉の順につけて揚げますが、卵をつかわない「小麦粉+水」でつくる「バッター液」→パン粉で揚げることでたんぱく質を抑えることができます。



 




動物性たんぱく質とは、動物性の食品に含まれるたんぱく質のことです。肉や魚、卵や乳製品などに多く含まれています。動物性たんぱく質は必須アミノ酸が多く含まれていることが特徴です。

植物性たんぱく質は、植物性の食品に含まれるたんぱく質です。体内の吸収率は動物性たんぱく質質97%に対し、植物性たんぱく質は84%です。動物性たんぱく質と比べ、消化・吸収もゆっくりです。
しかし、植物性たんぱく質でもアミノ酸の含有量が極端に少ないわけではなく、植物性たんぱく質は脂肪量が少なく、代謝を上げるナトリウムやカリウムが豊富です。
また、サポニンやイソフラボンといった抗酸化作用を促進させたり、ホルモンのバランスを保つ成分も含まれています。

植物性たんぱく質と動物性たんぱく質は、どちらにもメリットとデメリットがあります。短所を補い合うためにも、どちらもバランスよく摂取するのが理想的。
詳細な摂取比率というのは決められていませんが、総摂取エネルギーに占める植物性たんぱく質の摂取割合が多いほど、死亡率や有病率は下がるとの研究報告もあります。
複数の食品を組み合わせて多種多様なたんぱく源を摂るのが良いでしょう。

注意!腎機能の重症度や服用している薬によっては禁忌の食材もあります。必ず主治医や管理栄養士、薬剤師に指示に従いましょう。


エネルギー不足には気をつけよう!

たんぱく質制限を行うとどうしてもエネルギー不足が生じやすくなります。不足分は脂質と炭水化物で補いまししょう。

炭水化物といっても砂糖を多く含む食品は糖尿病を招きかねません。主食に玄米や雑穀米、全粒粉のパンなどを取り入れたり、よく噛んで食べましょう。
揚げ物や油を使用したメニューが続くことが苦手な人は、治療用特殊食品といった、たんぱく質の含有量がかなり少なく、エネルギーが十分とれる食品をうまく取り入れると良いでしょう。


参考記事:腎臓に負担をかけない食事 適正エネルギー量とは? 



末期腎不全は全世界的に増え続けています。早期発見、早期治療することが大切です。生活習慣病(肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常)や動脈硬化を指摘されたら早めに生活習慣、食習慣を見直しましょう。
慢性腎臓病の食事療法は、もとの疾患の種類、病状、腎機能によって異なります。間違った食事制限は、病状の悪化に繋がるため、主治医や管理栄養士に相談しながら行いましょう。

参照: | 我が国における慢性腎臓病(CKD)対策への取り組み(厚生労働省)


参考記事:
あなたの腎臓は大丈夫!?自覚症状がない「隠れ腎臓病」について 

 

生活習慣病を改善したい方、気になっている方

日々の食事の中で血糖値のコントロールや血圧管理に悩まれている方も多いと思います。「マイコーチ」では糖尿病や腎臓病の食事療法に配慮した、エネルギーや塩分を調整したお弁当をご用意しております。 只今、無料カウンセリングを受付中です。この機会にぜひご相談して下さいね。



  • 管理栄養士 腎臓病療養指導士

    大都 宏子(だいと ひろこ)

    私はここに来るまでの20年。多くの在宅で生活習慣病の療養をされている方に出会ってきました。病院とは異なり、自宅で食事療法に取り組まれる方の悩みや不安は千差万別。自分なりに取り組むもなかなか改善できない。何からすれば良いのかわからない、気づけば重症化していた・・・悩みは出会った人の数だけあったように思います。 ここでは、少しでもみなさんの不安や悩み解決の糸口になるような情報を発信していきたいと思います。