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腎臓を守る食事 カリウム制限ってどうすれば良いの?? 


腎臓病と診断されたら、カリウム制限って必要?? 野菜も果物もあれもこれもダメ?!いったい何を食べたら良いの!?そんな声も聞こえてきます。ここではカリウムについて、カリウム制限との付き合い方をお伝えしていきます。

腎臓病は・・・

その名の通り、腎臓のはたらきが悪くなる病気です。

一度失われた腎臓の機能は、多くの場合は回復することがなく、慢性の腎不全となります(急性の腎臓機能障害といった例外もあります)
食事や薬物療法が必要になりますが、特に食事療法は腎臓病の発症予防と重症化予防において重要と言われています。

参照:慢性腎臓病 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

 



カリウムの役割

カリウムは主に人体の細胞に存在し、成人なら約120gから200g程度は常に保有している成分です。
体内で多くの役割を果たしており、生命維持に不可欠な存在です。

カリウムは、ナトリウム同様に細胞内液の浸透圧を調節して一定に保つ働きがあります。また、神経の興奮性や筋肉の収縮に関わっており、体液のpHバランスを保つ役割も果たしています。
他に、ナトリウムを身体の外に出しやすくする作用があるため、塩分の摂り過ぎを調節するのに役立ちます。
不足するとこれらの働きに影響することはもちろん、脱力感や食欲不振、筋無力症、精神障害、不整脈などの症状がみられることがあります。


参照:カリウム | e-ヘルスネット(厚生労働省)


血中カリウム値が上がるとどうなるの??

 

健康な腎臓であれば、大量にカリウムを摂取した場合でも摂取量に合わせてカリウムの排泄量を調整するため、通常、カリウムが過剰になることはまれであると言われています。

摂取されたカリウムは、小腸で吸収されて各器官で必要な分だけ使用し、余分は腎臓に運ばれて処理されます。腎臓では、血中のカリウム濃度がおよそ3.6~5.2mEq/Lに維持できるよう調整しています。

腎臓の機能が低下すると適切にカリウムが排出できなくなり、血中のカリウム濃度が高くなり、カリウム濃度が5.5mEq/Lを超えてくると「高カリウム血症」を発症します。

  • 吐き気や嘔吐など、消化器官の不調
  • しびれや知覚過敏
  • 脱力感など、筋肉や神経伝達の異常
  • 不整脈

といった症状が現れてきます。
特に不整脈には注意が必要です。
心臓にある心筋の細胞膜では常にイオンが出入りすることで電気を発生し、心筋を動かしています。
これが鼓動、脈拍となります。
そのため、カリウムやナトリウムのバランスが崩れると不整脈の原因に繋がります。
血中のカリウム濃度が7~8mEq/Lを超える重度の高カリウム状態となると、突然心臓が止まって死亡するケースもあります。


カリウム自体が腎臓に悪影響を及ぼすわけではありません。腎機能が低下しているとカリウムを十分に尿に排泄することができずに、体内に蓄積してしまいます。血中のカリウム濃度が高くなることで危険な不整脈が起きたり、心臓が止まって突然死することになるのです。

このようなリスクを回避するために、血液中のカリウム濃度が正常範囲内であるようにカリウム摂取を制限する必要があるわけです。

血清カリウム 値は 4.0 mEq/L以上,5.5 mEq/L 未満に管理することが推奨されています。

参考文献:一般社団法人 日本腎臓学会編 エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023、東京医学社(2023) 


こうやってカリウム制限と付き合おう

「腎臓が悪い=カリウムを制限する必要がある」ではなく、個人によって異なります。
ここでは、「高カリウム血症」と診断され、カリウムの制限が必要と言われた場合の対策をご紹介します。


★カリウムの「水溶性」の特性を活用する

カリウムは水溶性。水に溶けだす性質があります。野菜は、「茹でる」、「水にさらす」などの下処理をしてから調理しましょう。「茹でる」などの加熱する調理法は、より多くのカリウムを食品から水に溶け出すことができるため効果的です。大きく切るより小さく切った方が容易に溶けだすため、なるべく小さめに切ると良いでしょう。料理のたびに茹でると手間もかかるため多めに茹でて冷蔵庫で保管しても良いですね。電子レンジでの下処理ではカリウムは減りませんのでご注意ください。柔らかくするのが目的ではないので・・


果物に注意
ドライフルーツは、水分量が少なく成分が凝縮されているため、少量でも多くのカリウムを含んでおり、さらに乾燥している分、ついつい食べる量が多くなってしまいます。干しレーズンやプルーンだけでなく干し柿、干し芋も要注意です。
果物の缶詰はシロップ漬けの状態であり、果肉に含まれるカリウムは、生の果物に比べて約半分となっています。シロップ中にカリウムが溶け出しているため、シロップは摂取しないようにしましょう。


いも類の食べ方に注意
いも類もカリウムが多い食品です。100gあたり、里芋640mg、やまと芋590mg、長芋、430mg、じゃが芋410mg、さつま芋380mg。もちろん調理をする前に「(なるべく小さめに)切って水にさらす、もしくは茹でて」から調理をすれば大丈夫。水さらしして揚げたり、茹でてサラダにすればエネルギー確保にもおススメです。ここで注意すべき食べ方は「焼き芋」、トロロとして生で食べる」この食べ方はカリウムをそのまま摂取することになるでなるべく避けましょう。


飲み物に注意
健康に良さそうな飲み物には注意が必要です。果汁100%の野菜や果物のジュースは野菜や果物のカリウムを濃縮しているため、より多くのカリウムが含まれています。
青汁も販売している会社ごとに若干カリウム含有量は異なりますが、中には1杯で200mg以上の摂取になってしまう商品もあるようです。
玉露や抹茶などは特にカリウムを多く含みます。茶葉の量や浸出時間によってカリウム量のばらつきがあります。濃いめのお茶はカリウム量が多くなるためうすめにサッと煎れましょう。お茶でおすすめはウーロン茶や麦茶です。


「減塩」と謳った商品に注意
「減塩が必要」と減塩塩や減塩醤油、減塩めんつゆ・・・と調味料を減塩シリーズで揃えるのは要注意です。
塩(塩化ナトリウム)の代わりに塩化カリウムを使ったものがあります。塩分は確かに控えられていますが、代わり塩化カリウムが含まれています。ご購入の際は原材料や栄養価表示を確認しましょう。減塩〇〇を使わず、普通の調味料を減らすだけでも減塩できます。
参考記事:腎臓を守る食事 塩分って必要?不要? 塩分を控えるコツ7選 


食事量に注意
食べ過ぎもはもちろんよくないですが、減らしすぎるのもよくありません。必要なエネルギーが十分に摂れないと人間の体は自分の細胞を壊してエネルギーを補おうとします。細胞の中にはカリウムが含まれているため血中のカリウム値が上昇するのです。
エネルギー不足にならないことも重要です。
参考記事:腎臓に負担をかけない食事 適正エネルギー量とは? 


具沢山の味噌汁、鍋の〆の雑炊に注意
野菜や芋類をたっぷり入れて具沢山の味噌汁や豚汁。ちょっと作り方に注意しましょう。たくさん野菜や芋類、きのこをぐつぐつ炊くとカリウムたっぷりのお出汁になります。それを飲むと・・・??お出汁の中に予め茹でた野菜や芋類を入れてお味噌を溶きましょう。
同じく、たっぷり野菜と魚や肉類が摂れる鍋料理。これらもぐつぐつお鍋の中で加熱することでカリウムがお鍋にたっぷりと出ています。野菜など取り出して食べる分にはカリウムがある程度出ていますが、お鍋の中には旨味たっぷり=カリウムもたっぷり。ここにご飯を入れて雑炊にすると・・・??
カリウムも存分に摂ることになります。〆の雑炊は避けましょう。。






メロンやバナナ、キウイといった果物、アボカド、種実類(栗、ナッツ類)にはカリウムが多く含まれます。茹でたりすることができない為、食べる量や頻度に注意しましょう。
具体的な量や頻度は、血清カリウム値や食事内容・量に応じて管理栄養士と相談して決めると良いでしょう。


注意!腎機能の重症度や服用している薬によっては禁忌の食材もあります。
必ず主治医や管理栄養士、薬剤師に指示に従いましょう。


末期腎不全は全世界的に増え続けています。早期発見、早期治療することが大切です。生活習慣病(肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常)や動脈硬化を指摘されたら早めに生活習慣、食習慣を見直しましょう。
慢性腎臓病の食事療法の基本は、「塩分を控える」「たんぱく質制限」「適正エネルギー量の摂取」の3つと言われています。また、必要に応じて「カリウムやリンの制限」が加わります。
もとの疾患の種類、病状、腎機能によって異なります。間違った食事制限は、病状の悪化に繋がるため、主治医や管理栄養士に相談しながら行いましょう。


参照: | 我が国における慢性腎臓病(CKD)対策への取り組み(厚生労働省)
参考文献:一般社団法人 日本腎臓学会編 エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023、東京医学社(2023) 


参考記事:
あなたの腎臓は大丈夫!?自覚症状がない「隠れ腎臓病」について 

参考記事:もし、腎臓病と言われたら?何からどうすればよいの? 



生活習慣病を改善したい方、気になっている方

日々の食事の中で血糖値のコントロールや血圧管理に悩まれている方も多いと思います。「マイコーチ」では糖尿病や腎臓病の食事療法に配慮した、エネルギーや塩分を調整したお弁当をご用意しております。 只今、無料カウンセリングを受付中です。この機会にぜひご相談して下さいね。



  • 管理栄養士 腎臓病療養指導士

    大都 宏子(だいと ひろこ)

    私はここに来るまでの20年。多くの在宅で生活習慣病の療養をされている方に出会ってきました。病院とは異なり、自宅で食事療法に取り組まれる方の悩みや不安は千差万別。自分なりに取り組むもなかなか改善できない。何からすれば良いのかわからない、気づけば重症化していた・・・悩みは出会った人の数だけあったように思います。 ここでは、少しでもみなさんの不安や悩み解決の糸口になるような情報を発信していきたいと思います。